秋田県羽後町 イーヴェうご協議会 会長 樋口陸郎氏 秋田県湯沢市横堀地区出身
カミさんが羽後町の出身。平成元年に羽後高校が現在の場所に移転し、その跡地が分譲地として売り出されたことを耳にした。「定年後は何処でどのように過ごしていくか」、当時考えていたこともあり、秋田に戻るかもしれないと思って一区画購入した。定年間近になり秋田に戻ろうと決断、その地に家を建て移住しました。
副会長 伊藤恒介氏 秋田県湯沢市出身(写真左)、事務局長兼会計 岸 正二氏 神奈川県横浜市出身(写真 右)
伊藤氏:羽後町の隣、湯沢市にある、秋田木工(株)に長年勤めていました。職人として勤めていましたが、営業も経験し様々な場所へも行きました。定年後に勤めた、羽後町社会福祉協議会のシルバー人材センター立上げの時、会長に出会ったことが縁で、協議会へ入会することに決めました。
岸氏:羽後町に移住し15年になります。カミさんが秋田県横手市の出身だった縁もあり、羽後町の三輪地区で分譲していた土地を移住前に購入していました。定年を機にここへ家を建て移住しました。ご近所に協議会のメンバーがおり、会長を紹介していただいたことが、入会するきっかけとなりました。
どんな活動をしていますか。
羽後町に既に移住している人を中心に組織された「イーヴェうご協議会」を運営しています。「イーヴェ」とは秋田の方言で「良いでしょう」という意味です。羽後町の良さを紹介し、羽後町を良くして行こうという意味で名付けています。地方には昔からの風習がありますが、時間と共にこの習慣に慣れていき、地域に暮らす方々とコミュニケーションを深めることにより、意気投合する仲間が増えていくとの考えの下に活動しています。
主たる活動としては、移住施策へ繋がる研修として年2回の視察研修の実施。この研修は、移住者と地域に住んでいる方々に参加いただき両者の交流も兼ねています。また、交流人口拡大を図るべく東京江東区にある高層マンションのバザーに参加し、羽後町のPRをおこなうとともに住民の方々との交流も図っています。本年は、NPO法人 秋田移住定住支援センターの取り組みと連携し、羽後町で「県南地区移住定住者交流会」も主催しました。この他にも様々な取り組みを実施していますが、会としては年々会員が減り、高齢化してきている状況です。
会が始まったきっかっけ
協議会が立ち上がる2年前、当時の町長より「町が将来人口減少に陥るのはあきらかなので、都市部より移住者を呼び込む活動をして欲しい」と話を持ちかけられました。当時、県内で移住施策を具体的に打ち出し実施している自治体も少ない状態、町でも具体的にどのように取り組むかなど定まっていない状況でした。この後、移住者を呼び込む活動を行う団体として、平成18年12月19日正式に発足。当時の協議会は、役場の企画商工課が主導し運営、羽後町に既に移住している人を中心とした会員14名、年間5万円の予算でスタートしました
発足当時は、地方創生という言葉もなく、「定年退職者を都市部から呼びこもう」との目的でスタートしました。しかし、行政としてもどのように呼び込んでいくのか具体的方法が決まっていない状況でしたので、当初はこの方法を議論することが多かったと思います。
そんな中「まず、定住の体験ができる家を作ってはどうか?」との意見がまとまり、協議会より町へ提言するカタチで、平成22年12月に“羽後町定住体験住宅”が完成、翌年の1月から稼働し始めました。住宅ができた当初は、まず地域の方々に知ってもらおうと内覧会を協議会で実施していました。
しかし、体験住宅の存在を都市部へPRしようにも協議会の予算は5万円、東京への往復旅費としても足らない状況でした。
14名で始まった会も、取り組みや活動に退屈を感じる会員もおり人数は次第に減っていく状況でした。この状況下で役員編成するにあたり、「移住者だけでは地域の方々の気持ちを察することはできないのではないか」との意見もあり、会の趣旨に賛同する方にも入会できる規約に変更し、現在は移住者だけでなく羽後町出身者や羽後町に生まれ育った方も会員として参加していただいています。
活動する上で、大切にしていること
「活動内容を活発化するには費用が必要」との思いを抱えながら、平成27年までこのような状態が続きました。「このままだと名ばかりの団体になる」と会員みんなの考えの下、羽後町出身の県議、町議を相談者として迎え、今後の活動について事業計画を練り直しました。支援していただいた町議の方々の援助もあり、平成28年度から活動予算が増え、都市部と交流し羽後町をPRしていくことも可能となり、東京在住時に居住し自治会長を務めた、東京都江東区亀戸にあるマンションの住民バザーの際、地域間の交流をしながら羽後町をPRしています。昨年から実施し、今年も2回目の交流会を実施しました。昨年10月には、このマンションに住む22名の方が、観光を兼ねて羽後町を来町されるなど、交流人口に繋げることもできました。
現在までの活動の中、県内でも移住に対し動きが活発化し、NPO法人 秋田移住定住総合支援センターとも繋がり、秋田県内の移住者で組織されるネットワークの会長を本年度よりお願いされるカタチで引き受けることになりました。本年9月には羽後町で「秋田県南地区移住定住者交流会」を実施することができ、移住者と地域の方々が繋がるきっかけを作ることが出来たのではないかと思います。移住後に出会った方々とのネットワークを活かすことでこのような会が開催できたことに「繋がることの大切さ」を改めて実感しました。
移住の先輩である私たちだからこそ、移住者のために何が出来るのかを考えていますが、移住者は移住地の人と感覚や環境の違いもあると思っています。移住地から出ていきたいと思わせない対策も必要なので、この部分に対して視察研修や交流会などを実施し移住者と地域の方が交流できる機会を提供しています。
今後の目標
他の地区では、地域に馴染めず移住地から出て行ってしまったという話も聞くことがあります。このようなことにならないようイーヴェうご協議会は、移住者に対し移住後のサポートを丁寧に取り組んでいきたいと思っています。地域の方が「頑張ってくれているな」と声を掛けていただき、心強く感じる時もありますが、半面「内心はホントにそう思ってくれてはいないのではないか」と不安を感じることもあります。地域の方と移住者の相互交流を促していますが、現実では難しい部分もあります。10年以上活動を続けてきましたが、自分たちのチカラだけではどうにもできない部分もあると感じていますので、今後は、地域に生まれ暮らす人と一緒に移住者を増やす方法を考える機会も作り、移住者と地元の人が溶け込んでいけるよう関係性を深めていくことも必要だとも感じています。小さな交流会やお茶会でもいいので、活動を理解してもらうことを継続していく必要性も感じています。
羽後町の子供達が町を出ることは避け難いことですが、出ていった子供を地元の人が呼び戻していけるような事業も今後検討していきたいです。
イーヴェうご協議会として10年活動していますが、大きな成果がなかなか出せていない部分もあります。「そろそろ引退かな」と思っていましたが、今年は3名方が入会してくれ、まだまだ頑張っていかなければならないと改めて感じています。
今後、町へ呼び込むべき移住者は子育て世代なので、新たに入会した若い世代、活動を支援してくれている地域おこし協力隊とも連携しながら、秋田県の状況はどうなっているのかを改めて確認し、自分たちの活動の原点に立って内容を見直す必要もあります。今後の目標に向かい辿り着くため、みんなで力を合わせてやっていきたいと思います。
ライター:崎山健治 2016年5月に大阪市から秋田県羽後町へ移住。 羽後町に関西のノリを広め、秋田と大阪の文化をミックスしたいと考える一方、 地域の問題・課題を事業として解決したいと起業を目指し活動中