(以下の文章は、2017年6月3日〜4日に羽後町の民家にホームステイをした国際教養大学留学生の体験記を和訳したものです。)
先週末、私は秋田県羽後町でホームステイをする機会に恵まれた。留学している国際教養大学から離れるにつれ、どんどん私の故郷シドニーとは違う景色になっていった。そこは地域文化の詰まった、田園と笑顔に溢れる町だった。全てが近代化された昨今では見ることが稀だが、羽後町では昔ながらの農業がとても盛んで、だからこそより思い出深いものになったと思う。
羽後町に着くと、私たちは農家の人たちと田植えをする機会に恵まれた。農家のご家族も、町の人たちも、ホストファミリーも、みなさんがあたたかく歓迎してくれた。私は事前のお知らせに倣って汚れてもいい服を着ていったが、農家の方が農作業用の服と長靴を貸してくれた。さあ、いよいよ田植えの始まりだ。私にとっては初めての経験で最初は何をどうすればいいのかさっぱりわからない。農家のお父さんがやり方を見せてくれた時はすごく簡単そうに見えた。なぜならお父さんがとても楽々とやっていたから。お父さんは「二本の指を使って苗を田んぼに引かれた線に沿って植えるんだよ」と教えてくれた。
しかし、実際にやってみると見た目よりもずっと難しく、田植えをしながら泥の中を動くのは至難の技だった。田植えは確かに難しかったが、楽しくもあり、”コミュニティ”というのはまさにこういうことを言うのだなと思った。大人も子供も一緒になって笑い合いながら働く。農家のご家族の笑顔を見ながら、私は「自分は羽後町のような田舎で暮らせるだろうか」と真剣に考えさせられた。
田植えを終えて農家のご家族にさよならをした後、私たちはホームステイ先のお宅へ向かった。ホームステイ先のご夫婦はとても親切で優しく、私たちが羽後町に来ることを心待ちにしてくれていた。彼らと一緒に海苔巻き、豆腐ハンバーグ、卵焼きやきんぴらごぼうなどを作った。
一緒にご飯を作って、一緒にひとつのテーブルを囲んで夕食を食べる。本当の家族みたいだった。食事は本当に美味しかった。時間を忘れるくらい話し、食べ、気づいた時には深夜を回っていた。和やかな雰囲気の中で過ごしたあの宝のような時間を、私は一生忘れないだろう。そしてこの経験は、「言葉の壁があっても、思いを通わせて一緒に楽しむことができる」ことの表れだと思う。私たちはホストファミリーに自国の特徴的な文化を教え、お父さん、お母さんは私たちに秋田弁を教えてくれた。中でも私が一番好きな秋田弁は、「”ままけ”(どうぞ、ご飯を食べてください)」だ。ホームステイをするのは初めてではなかったが、今回は全く違った手応えがあった。なぜなら、私はお父さん、お母さんたちと”心を通わせて対話する”ということができたからだ。
次の日、お母さんが朝早く起きて作ってくれた朝食をありがたくいただき、一緒に家を出発して地域の人との交流イベントに出かけた。山の上にある会館で地域の人たちと鍋敷きを作り、トランプをし、最後に一緒にお弁当を食べた。私たちは羽後町の大人や子供たちと交流する機会に恵まれ、すぐに仲良くなり、その後SNSでずっとやりとりしている。素敵な町の人たちに出会い、今回羽後町で体験したことは都会では絶対に経験できないことだ。そんな特別な週末に参加することができて本当にうれしく思う。
(Alice Kim・オーストラリア)