秋田県羽後町在住 後藤裕樹氏
建設会社、不動産会社、飲食店、3つの会社を経営、飲食店では自らが店員となり、お客様へ自分のオススメするワインを提供。一見、強面で難しい人に見えるが、気さくで皆が楽しめることを考え行動し、得意の話術で様々な人とコミュニケーションを図る、町の若者たちのリーダ的存在の一人です。
どんな活動をしていますか
建設会社では、一般建設業・解体業を中心に冬季間は除排雪業もおこなう。また、建設会社で建物の解体やリフォームした物件を、不動産会社で土地の仲介、中古再生住宅として販売などをしている。
飲食店としては、ワインバー「蔵しこ」を経営。この店は解体を依頼された町の中心部にある古民家を再生し、2016年8月オープンさせた。また、町内外の男たちが夏に向けて男を磨く「俺たちのダイエットシリーズ」というイベントを企画・運営。自らも参戦し今回で8回目を迎え、男たちの魅力増進にも精力的に取り組む。
はじめたきっかけ
建設会社は26歳の時、祖父から譲り受け代表となった。不動産会社は祖父の残した遺産整理のため不動産を勉強したことがきっかけ。遺品整理の目的だけで勉強するのは面白くないと思い、会社を立ち上げることを目標に資格取得し会社は10年目になる。結果として、建設会社で建物の解体をおこない、更地にした土地を不動産で仲介する。中古住宅を建設会社で再生し、不動産会社で販売もおこなえるバランスのいいカタチで経営できている。
ワインバーは、もとからやりたかったわけではなかった。解体を依頼された物件に立派な蔵があり、これを解体してしまうのはもったいないと思ったことがきっかけ。建物の解体を持ち主から相談された当初は、立地が町の中心部であること、公共施設に囲まれているなどのことから、行政側で利活用できないか役場にも相談したが、突発的な予算組みは難しいと言われ、建物すべてを解体してしまわないことを約束に自分で買い取ることを決断した。とはいえ、どのように利活用しようかと悩んでいた時、自分の趣味でもあるワインを飲めるバーをやってみようと思った。
大切にしていること
経営者としては他の方たちと少し違い、会社経営は自分がやらなくてもいいと考えている。自分が会社を設立してその後、より良く持続運営できる人がいれば誰がやってもいいと思う。今ある会社もやりたいという人がいれば譲ってもいいと考えている。地域の顕在的な需要に対する満足度を高めることができれば最後まで自分が経営したいというわけではない。自分は需要があり手を付けられていない部分に応えられる会社を作り、やりたいという人がいれば任せ、新しい需要に応えていきたい。
建設業界は、若い人が減少してきている。事業比率に応じて働く人も減ること自体は自然の摂理。今後は企業数が減る必要があると思うし次代の働き手として若い世代の就労は必要。業界内の各会社として経営破綻はできないので企業が合併し経営陣が減っていくことで効率の良く業界運営ができるようになりバランスを取りながら進んでいくのではないかと予測している。働く人が減り会社規模が縮小すると業務受注も難しくなる状況なので、各経営者がどこかで腹をくくって経営から退いていくことが今後の課題ではないかと考えている。
ワインバーに関しては、採算がとりやすい事業でないことは最初からわかっていた。蔵しこをオープンさせるにあたり、小さな町でワインバーを作ってニーズがあるか不安もあったし、ワインバー単体の事業で経営していくことが難しいのはわかっていた。だからといって食事メニューを充実させたワインバーだと町内の飲食店同士でお客を奪い合うことになる。このような事業内容だと町のためにならないと考えワインの品揃えを充実させ、おつまみ程度のサイドメニューを提供する店としている。店の雰囲気は自分が行きたいと思えるイメージを実現したことで事業費はかけすぎたかもしれないが、クラウドファンディングで事業費の1/10を支援いただき非常に感謝している。またクラウドファンディングをおこなったことは思わぬ宣伝効果となり、おかげさまで週末は賑わっている。しかし、平日の来客は少なく、特に冬季間は厳しい状況だった。初年度なので今のペースでやっていきたいと思っているが、今後は日中の利用方法などを考えてやっていきたい。
今後の目標を教えてください
羽後町は町外へ流出した若者が戻ってくるケースは少なく、出て行った若者が戻って来た時に働ける仕事の種類や数も減ってきている。今後、自分の子供達世代が町に残ってもこの状況では町で就職し働くことが増々厳しくなる。若い世代で町を拠点として起業してくれる人が増えれば子供達にも仕事は残していけると思っている。羽後町も近隣市町村も同様に人口減少・少子高齢化しており、商圏規模も縮小しているエリアでお客やお金を回しても存続は望めない。今後は仕事や商品の販路を都市部から取ってこれるような仕組みを残していけなければいけないと思う。特に飲食店は今後厳しい状況となり、町外からのお客さんを呼び込むことがもっと必要になる。日中ならばある程度の集客をしていける可能性があるだろうが、夜の飲食、特にお酒を提供する店では交通面からもっと難しくなる。町で実施している観光DMOのインバウンド施策や、行政が取組む地方創生事業など、様々な事業との連携や可能性を考えながら、ワインバー蔵しこの日中の利活用を検討していきたい。
収益面や、建物を無駄にしないという考えに基づくと、建設業、不動産業は居住や不動産に関することで生活に密着しており今後の展開をもっと考えていきたい。羽後町にはアパートの棟数が少ない。需要がないから少ないのだと思うが、実は空いている部屋がほとんどない。しかも空きがでればすぐに埋まってしまうような状況。このような点は今後の展開のヒントになるかもしれない。シェアハウスなどをつくると、成功する可能性があるかもしれないが、ありきたりのシェアハウスではつまらないし、何処の地域も地方創生に乗り出し同様の仕掛けをおこなっている中なので、何か尖った部分が必要だと感じている。シェアハウス以外の他の事業もこの点は一緒だと思う。人口減少が進む中、首都圏からのアクセスが悪い秋田県、羽後町は電車の駅もない町なので、人を呼び込むのは非常に難しい点だと感じるが、今後自分たちで町のことについてもっと考え行動していかなければならない。
ワインバー「蔵しこ」
所在地:〒012-1131 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内本町109 TEL: 0183-55-8384
定休日:日曜日(月曜日が祝日の際は営業) 営業時間:19:00~