町に喜びのスパイラルを作りたい 

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阿部剛(つよし)さん

ゆきとぴあ七曲り実行委員長。ゆきとぴあ七曲り 花嫁道中に第1回から携わり、2年前から実行委員長を務めている。ゆきとぴあ七曲り実行委員会は、ゆきとぴあフォーラム、広場での催し、キャンドルロード、花嫁道中の4つを軸にイベント全体の運営を担っている。

【野望】いろんなことを死ぬまでやりたい。

 

~ 一人の喜びをみんなの喜びに ~

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「実は、そろそろこのイベントをやめようと思った。でもね、当日町の中を通ると、家の前でいろんな人がちっちゃい“かまくら”を作っている。いろんなものがあって、それも楽しそうにやっていた。これはやめられないとおもった。」阿部さんは笑っていた。32年続くイベントはすでに、町の一大イベントになっていた。良き伝統として根付きつつある嫁入り行事(花嫁道中)を運営する、阿部実行委員長にこのイベントにそそぐ熱意と今後の構想について伺った。

秋田県雄勝郡羽後町は、県の南部に位置し昔ながらの文化がいまだに息づいているのどかな田舎町だ。国の無形民俗文化財に指定されている西馬音内盆踊りは有名で、町で一番の観光イベントになっている。また冬には花嫁花婿を馬そりに乗せ、昔の嫁入り行事再現した花嫁道中というイベントがある。このイベントを30年前から運営しているのが、ゆきとぴあ七曲り実行委員会だ。

 

ゆきとぴあ七曲り 花嫁道中

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昭和61年にスタートした昔の嫁入り風景を再現したイベント。12キロにわたって続く雪道を、馬そりと隊付きが通る。毎年地元の中学生にも参加をよびかけ、今年はおよそ30人が参加した。町部を出発した新郎新婦は、馬そり揺られ峠を越える。七曲り峠に入ると雪壁に埋められたろうそくの火が一行を迎える。キャンドルで彩られた峠を通り山の上の集落へ。途中休憩しながらおよそ6時間かけて歩く。峠を上りきるころにはすっかり夜のとばりが下り、キャンドルがゴールまでの道を照らしている。それはまるで新婚夫婦のこれからを明るく照らしているようだ。

 

みんなが楽しいお祭りにしないといけない

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昔ながらの嫁入り風景を再現したお祝いイベント故に、主役である新郎新婦だけが喜びムードではいけないと話す阿部さん。人の喜んでいる姿をみて喜んでいる人を増やすために、なにを心がけるべきなのだろうか。それには、このイベントに関わる全ての人が嫌な気持ちを持たずにいることが大切だという。

「きっかけは3年ほど前、箱根駅伝を応援にいったときだった。ついついどんなふうに運営しているのかずっと気にしてみていた。すると、地域住民や、主催者スタッフ、警備員も旗を配る新聞屋さんもみんなが楽しそうに協力している。その場にいる誰もが、盛り上げよう、選手を応援しようとしている姿に感激した。レースが終わった後も、全員で跡形もなく片付けをする。これが地元に愛されているということなんだと実感した。ゆきとぴあ七曲りもこの無意識の協力を得られるようにならなければならない。」。このイベントが始まって30年がたつ。気が付くと各家の前に鎌倉ができるようになってきた。なるほど。これが無意識の協力かと私は気づいた。

阿部さんは今後の課題について、「いかにして、地域外の人にも喜びが伝わるようなイベントにするか。花嫁道中でも、関わる人みんながお祝いムードを作ることができれば、西馬音内盆踊りを超えるイベントになるのではないか。準備の段階も含めてより広く情報を発信し、いろんな地域の人も一緒作り上げるお祭りにしていきたい」と話してくれた。

 

ライター : 羽後町地域おこし協力隊 渡辺佐(たすく)

 

 

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