羽後町のファンを増やしていく仕組みが必要だ!

Pocket

_DSC3414

秋田県雄勝郡羽後町床舞地区在住 今野隆氏
役場職員時代から携わった観光事業で、羽後町を全国へアピールするため、定年後、羽後町観光物産協会の事務局長へ転身。2016年に完成した道の駅うご管理受託会社の役員も務め、今まで培ってきた幅広い人脈を使いアクティブに活動しています。

現在取り組んでいる活動
羽後町のPRの為、日本三大盆踊りの一つとなった、西馬音内(にしもない)盆踊りの知名度をあげる活動をおこなってきたが、ピーク時から観光客はだいぶ減っている。一方で、踊り手の数は段々と増えてきている。実際、東京ドームで開催された「ふるさと祭り東京2017」における西馬音内盆踊りの公演の踊り手は、首都圏の方々が中心となっている。これは、役場職員時代に訪れた東京で、日本舞踊の教室をおこなっている羽後町出身者と出会い、この方が盆踊りを教える教室を立ち上げて、約15年頑張ってくれているおかげで、じわじわと踊り手が増えてきていることが理由のようだ。ここで踊りを習う方々が、盆踊り当日に羽後町へ来て踊り、首都圏でも西馬音内盆踊りを伝承してくれていることで、全国的な知名度向上につながっている。農村や里山の風景などは他の地区でもある。しかし、西馬音内盆踊りは羽後町にしかなく、町で有数のキラーコンテンツである。これを切り口として羽後町をPRしている。現在、町でおこなっているインバウンド観光でも活用されており、この活動により、海外からも注目されるようになると、地元の人たちがもっと反応してくれるのではないか。③西馬音内盆踊りのPRを始めたきっかけ
役場職員時代に、観光に携わることとなった。今の観光物産協会は独立した団体だが、当時は役場の中で管理されていた組織だった。異動となった頃は、西馬音内盆踊りが報道番組で生中継され、ドラマの題材にもなったことで人気に火が付き、開催期間に観光客がどっと押し寄せた。盆踊りを中心にして観光を盛り上げるべく、職務をおこなう傍ら観光物産協会としてホームステイ研究会を立ち上げ、盆踊り期間中に500人をホームステイさせるなど、新たな施策に携わった。その後、観光課の課長となり、4年間勤めあげた後、定年と同時に観光物産協会を役場から独立させ、現在は同協会の事務局長を務めている。観光物産協会でおこなっていることは、役場職員時代から楽しんでやり続けてできている。④大切にしていること
観光のプラットホームづくりは、町のトップが旗を振り進めていかなくてはならないと思う。方向性を同じくする仲間が集まり、信頼関係を構築しながら進めていくことで、より質は高まっていく。現町長は、町外で開催されるイベントにも積極的に顔を出し、西馬音内盆踊りを中心に羽後町をPRし続けている。今は、モノを売るより”コト”を売る時代。今後は、西馬音内盆踊り開催地の街並みを文化として売っていきたい。この思いの中、盆踊りが開催される通りに、蔵をリノベーションしたワインバーが出来たことは良いことで、様々なイベントで訪れた来町者が、「羽後町には、こんなワインバーがあるんだ!」といつも驚き、楽しい時間を過ごしてくれている。このようなものが次々にできるといいが、町は体力不足。今後は、今あるものを利用した新しい街づくりができるようになれば良いと思う。行政の立場ではできなかったことを、立場が変わった今だからやっていきたい。仕事というものは、「苦痛」を感じるコトなく、楽しく、面白おかしくおこなうものである。ただ、ただのボランティアではいろんな面で疲弊してしまうので、町の人たちのインセンティブを高めていきたい。西馬音内盆踊りは短期的に旅行者を惹き付けるキラーコンテンツではあるが、羽後町の普段の生活や豪雪地帯の風景さえ、その環境を知らない人たちにとっては売り物になる可能性がある。羽後町への交流人口が増えて需要が高まれば、供給側も自然と動き出す。経済的に自立し続けられるよう、羽後町の生活や文化も売っていきたい。また、羽後町DMOのインバウンド観光も、町に人が集まる起爆剤になる可能性があるし、鎌鼬美術館もニッチな部分ではあるが世界中に”BUTOH”ファンがおり、これらを町外へPRすることで羽後町の様々なことを知ってもらうことができ、更なる交流人口増加へ繋がるのではないか。IMG_0592今後の目標
西馬音内盆踊りの人気に火が付いた影響で、開催期間中に一気に観光客が押し寄せるようになったが、それまではあくまで地元の伝統行事として長年継承され、規模も小さかった。宿泊施設も限られている町なので、盆踊り期間中に訪れる観光客は、近隣の市町村に宿泊している。地元の伝統行事を観に来た方々が開催地で宿泊できなければ、町になかなかお金が落ちないし、宿泊したいという要望にも現状応えられていない。現在のホームステイ研究会は、観光客より踊り手を宿泊させることがメインとなっている。2016年は、廃校を利活用している宿泊施設なども利用し、約200人を受け入れることができた。しかし、2002年に立ち上げた研究会メンバーは少しずつ高齢化してきており、当時と比較すると衰退化してきている。2017年度は、イベント民泊制度を利用し、ホームステイを受け入れてくれる民家を増やすことで規模を拡大し、観光客を受け入れたいと考えている。この時、受け入れしてくれた人たちが、民泊には大いなる可能性があることに気づいて欲しい。研究会で実施してきた14年分のノウハウを利用して、町の方々が農家民宿を始めるサポートをしていきたい。

また、2016年から株式会社ノビテクと企画している企業研修プロジェクト「まちの学校」にて、古民家を活用した交流人口増加に繋げる活動も進めている。企業をターゲットとした新しい企画で羽後町に足を運んでもらい、泊まっていただく。「少子高齢化が進み、人口が減少し続けている町をどうするか」というテーマでレポートを書いてもらい、その内容を町全体で共有したい。参加者側にとっても、物事を置き換え、最終的には自社をどうしていくかということを考える力がつく意義のある研修にしてほしい。

人口減少が深刻な我が羽後町は、危機的な状況と言える。町から1人いなくなれば、約120万円の消費が無くなると言われている。もし年間300人減ったとすると、約3億6300万円もの経済衰退となる。この状況下で、町内だけを販路とするのは無謀極まりない。町外からの来町による消費や、一人一人が自ら動いて域外消費を獲得することでプラスの経済効果を生み出していく必要がある。観光以外でも羽後町のファンを増やしていく仕組みづくりが、いま求められている。

 

 

ライター:秋田県羽後町地域おこし協力隊 崎山健治

Pocket