秋田県雄勝郡羽後町(うごまち)飯沢在住 鈴木杢之助(もくのすけ)重廣氏
830年以上続く、東北鈴木性46代目当主。茅葺民家に住みながら古物商を営みながら、茅葺屋根の修復工事請負、茅葺民家の保存活動をおこなっています。現在、居住している住宅は、東北鈴木姓発祥の地として国指定重要文化財となっている。
住んでいる家が国指定重要文化財!?
昭和40年頃、先代当主(杢之助さんのお父さん)が、現住宅の取り壊しを検討していた時、歴史研究家の方と蔵の中を整理していると、昔おこなわれた当該住宅の建設・改築の契約書や、鈴木家に関する膨大な量の古文書が発見され、これらを調べると重要な歴史的価値があると評価を受けたそうです。当時、国の重要文化財指定は、神社仏閣などを中心とした流れから一般住宅にも活用していく流れを受け昭和48年に住宅の主屋と中門が国指定重要文化財と指定され修復工事受けます。その後、平成6年に土蔵及び宅地、山林、古文書が追加指定を受け現在の姿となり、杢之助さんは今もこの家にお住まいです。
茅葺民家で暮らす上での苦労
杢之助さんの暮らす住まいは、増改築を繰り返し350年以上経過した茅葺屋根の民家。修復工事をおこなったとはいえ、家の中でも冬の寒さは厳しく、屋根の葺き替えなど維持も大変だそうです。しかし、そんな苦労があっても先祖代々より譲り受け重要文化財指定を受けた家を誇りとしています。現在、国指定重要文化財鈴木家住宅として家の内覧もおこない、海外からも注目されています。昨年も日本の古民家を愛するアメリカ人女性のホームステイをサポートする趣旨のテレビ番組の企画で実際にホームステイ先となるなど、自身の住む昔からの暮らしぶりを大切にされています。羽後町は茅葺民家が数多く残る地域。この風景をなんとか維持したいと茅葺職人とも関わり、茅葺民家の保存にも意欲的です。
茅葺民家を守る
茅葺民家を保存したいと様々な活動をおこなう杢之助さん。茅葺職人さんの生活について「秋田の職人は、雪の影響で冬は仕事ができず、出稼ぎに出たりして生計を立てるしかない。これがこの町で茅葺職人の後継者ができない要因のひとつ」と語ります。冬場でも茅葺職人として生きていける活動が何かないかと考え、後継者を育てていける環境が必要とおっしゃいます。自身も羽後町や他地域の茅葺職人と関わり、今後の活動内容を模索しておられます。また、「地域に残る茅葺民家は、後継者の流出により高齢者二人だけでの暮らしとなっており、この方たちがお亡くなりなられると保存も容易ではなくなるが、これらを残す活動もおこなっていきたい。」と熱い思いを語っておられました。
ライター:秋田県羽後町地域おこし協力隊 崎山健治